わたしが漫画家をしばらくお休みした理由「講師編」

わたしが漫画家をお休みした理由「講師編」

前回は、わたしが、漫画をお休みするかわりに、お絵かきサークルの講師として、多くのこども達、そして、自分の子育てに向き合う、きっかけについて書いてみました。

今日は「講師編」として、講師として活動する中で得られた、いくつかの「気づき」について書いてみようと思います。

そもそも、なんでこどもを生んだからって、漫画家育休しないとダメなの?てことは、長くなるので次回、お話したいと思います。

まあ、いろんな理由はあったわけですが、とにかく、こどもに背中を向けて、机にかじりついて漫画を描く日々をやめて、真正面から(自分の子も含め)こどもたちと向き合う日常を取り戻したわたし。

それはとても穏やかで、優しい時間でした。

ただ、これまで、ずっと走り続けて来た副作用なのでしょうか?

不思議なことに、そうなると今度は、それまで漫画の創作に使っていたエネルギーが、あり余り過ぎて、何かに使わないと苦しいのです。苦笑。

漫画を描くためのエネルギーが、どれほど大きなものなのか、それを使わないでいると、エネルギーを持て余してしまう、ということも、やはり、離れてみて、はじめて実感しました。

それで、その、「余ったエネルギー」を、私はまずはアトリエの「講師」として、自分のこどもと、こどもたちとともに、様々な創作する場をつくることに向けました。

その頃は、息子や、姪っ子も、絵をかくことや工作が大好きでしたので、それは、彼らの為でもありました。

おかげさまで、マンガ家が講師のアトリエは珍しく、近所の評判となり、一時は週4でクラスを持つくらいになりました。

(今も、三つの学校と、サークルと、個人で、週4か5で、約10コマ、時にはそれ以上のクラスを受け持っています。)

もともとこどもが大好きで、漫画家を仕事に選んだのも「こどもに夢を与えたい」が理由のわたしにとって、
「こどもの夢をカタチにする」お手伝いが出来る「講師」は、まさにもうひとつの「天職」だと思っています。

クリエイティブなことに取り組む時、こどもたちの目は、キラキラと輝きます。

ダイレクトにこどもの創作作業を目にすると、私の中の創造力も刺激を受けて、一人では挑戦できないようことに、どんどんチャレンジする意欲が湧いてきます。

それは、漫画を描く以上に、刺激的で、充実した時間でした。

そして、そんな日々の中で、アトリエに集まるこどもたちやママと触れ合ううちに、あることに気づきます。

それは、こどもの「クリエイティブな才能」や「可能性」に、無頓着なママが意外に多い、ということです。

それは、実は、漫画で忙しくしていた時のわたしも例外ではありませんでした。

三歳の頃でしたか、保育園の先生に呼び止められて、「Hくん(息子)は、演技や演劇の才能があると思いますが、お母さまはお子さんのそちらの方面の才能を、伸ばしたいと思われたことはありませんか?」と聞かれたことがありました。

保育園の先生は、たくさんのこどもさんを、細やかに見て、客観的にその子の持ち味や可能性を見極める目をお持ちなのだと思います。

けれどその頃は、わたしは、仕事に追われて、彼に習い事をさせるような時間も、気持ちの余裕もなく、その先生のありがたいご助言も、スルーしてしまっていました。

もし、その頃からわたしが彼の才能を伸ばすことに、真剣に向き合っていたら、もしかしたら彼の人生は変わっていたかも?しれません。

漫画家をお休みして、ほっと一息出来た頃、息子本人の強い希望もあり、「クラシックバレエ」を習い始め、その姿を見守るようになってから、やっと、わたしは彼の持つ才能の片鱗に気づくことになるのですが、それはまたいずれの機会としましょう。

アトリエに通うこどものママは
ほとんどが働いてるママでした。

でも、働くママに限らず、仕事や家事や、子育てに忙しく、中には、気づいていても、「こどものクリエイティブな才能を伸ばすこと」より、他の、もっと将来に「役立つ」習い事や「お受験」の勉強を、優先される場合も、多いのだと思います。

幸い、うちのアトリエのママたちは、当然ながら、こどものクリエイティブな才能を伸ばすことに対して、意識が高い方々でしたので、わたしがご提案することに、とても寛容で、積極的でした。

「こどもたちの考えた物語を、大きな紙芝居にて、舞台で発表したい。」

「こどもたちがデザインした服を工作でつくり、ファッションショーをしたい。」

「こどもたちの漫画を展示したい」

「こどもたちを写真のモデルにして物語を表現したい」

「こどもたちと映画やアニメをつくり、上映したい」

(実は、「映画づくり」も、その活動の延長上の一つでした)

普通のお絵かき教室では、あまりやらないような課題を、どんどんご提案し、こどもたちと一緒にチャレンジして行きました。

こどもたちの可能性はまさに無限大。

子育て中のママたちは、「一番可愛い時期」に、写真や映像に、こどもたちの可愛い姿が残ることを、喜んでくださいましたし、参加を一緒に愉しんでくださいました。

この活動を通して、わたしは
こどもたちの持つ、無限の可能性を伸ばすのは、必ずしも親だけの役目とは限らない、ということに気づきます。

むしろ、親ではない、親戚や友人とも違う、客観的で、専門的な「講師」という立場だからこそ、その子の持つ個性や、才能に気づけること、可能性を育てられることもあるのだ、ということを実感しました。

子育てを経験し、自分の子育てから少し離れた、今の立場だからこそ、見えてくるものや、アドバイス出来ることも、あるのかもしれません。

わたしは常々、真の芸術品は、芸術家、つまり、人間そのものである、と思ってます。

その考えで言うと、わたしは、まさに他にかけがえのない「芸術家=芸術品」を育てるお手伝いをしているわけで、それはある意味、漫画を描く以上に、ワクワクする、クリエイティブなお仕事だと信じています。

そんなお仕事に出会わせていただき、導いてくださった方々には、今も感謝でいっぱいです。

ついつい、人の世話ばかりを焼いて、自分のことを後回しにしてしまうのが、わたしの長所でもあり、短所でもある訳ですが。

最近はようやく、いろんなことが落ち着いて来たので、今年からは、もう一度、原点に立ち返り、人を育てることと同時進行で、自分の作品を発表していくことにも、もう少し貪欲にならないと、と思ってます。

いよいよ明日は、春節で賑わう横浜中華街のギャラリーにて、自分の監督、監修した映画やアニメの作品を上映するイベントを開催します。

14日まで、イラスト、写真の展示もしています。
https://www.facebook.com/events/1547527715565880/

まだまだ、至らないことばかりのわたしですが、先日、ある恩人からいただいた言葉を、最後に記して、今日は、筆をおきます。

『これからの生き方が本物です。』