アーティストを仕事にする難しさ

今、講師として、アーティストを育成している中で、一番感じているのが、アーティストを仕事にする、つまり、プロのアーティストとして食べていく難しさです。

特に、現在の日本は、アーティストを仕事にする基盤が、なぜか、社会の仕組みにありません。

(欧米のみならず、中国や韓国でも、自国の文化を守り、外貨を稼ぐための大切な人材として、国費でアーティストを育て、仕事を与えているというのに、日本の国には、そのような制度はありません。むしろ、伝統や芸術文化が廃れようが、倒産しようが、ほとんどが放置されています。)

また、好きなことで食べてくための術を教えてくれるはずの学校も、なかなか頼りになりません。

少なくとも私のかよった美大では、当時はそうでした。

私が希望に胸を膨らませて、女子美大に入ってすぐ、教授から、一番初めに聞いた言葉に、唖然としました。

「君たち、好きなことをして食べていけると思うなよ」

好きを仕事にしていく人材を育てるためにあるはずの、
美大の教授が、高い入学金を払わせた挙句、そんなことを言う。

その発言自体も驚きましたが、卒業する頃には、それがあながち、嘘ではないどころか、残酷なことに、ほぼ現実に近い、ということにも驚きました。

卒業する時に、就職先一覧、みたいな表を配布されたのですが、わたしの卒業した日本画科で、卒業時に「絵を描くこと」を仕事に出来たのは、美術教師、画家、デザイン事務所なども含めて数人。

それ以外は、一般職の就職か、絵とは関係のないアルバイト、そして家事か、家業手伝いがほとんどでした。

(わたしも、卒業までにはデビューを決めていましたが、掲載がまだでしたので、漫画家とは書いてもらえませんでした)

学校を卒業後、アーティスト活動を続けようとしても、立ちはだかるのが、世間の、アーティスト活動に対しての冷たい現実です。

アーティストが、何かを無償でやるのは、当たり前。

無償ならまだしも、「参加費や場所代を払え」と言われる場合もしばしば。

「好きなことをやらせてあげるているんだから。」
「お金を払わなくたって、君たちはやりたいんでしょ?」

自分の与えられた才能を活かして、「ひとりでも多くの人に喜んでもらいたい。」

ただ、それだけの想いだけで、身銭を切って、身を削って、つくしても、なんの感謝もなく、報酬もない。

なんてことが、悲しいかな、日本では、日常茶飯事に起こります。

「世界で一番、アーティストに対しての理解が貧しい国」
それが日本だと言われています。

誤解なく伝わると良いのですが
基本、アーティストは、ボランティア活動が嫌いではありません。

というより、むしろ積極的です。

震災が起きた時、復興支援のボランティアに、私の周りのアーティストたちが、取るものもとりあえず、真っ先に現地へと動いたのは、今も記憶に新しいです。

それも、ごく一部の、お金が有り余ってるような、有名な、売れてる人だけではありません。

お昼代や帰りの交通費が危うい程の清貧な暮らしをしているのにかかわらず。

アーティストは、直感的に、自分の気持ちを優先に、採算を度外視して行動してしまいます。

この世知辛い、経済優先の世の中で、アーティストさんは、不思議と、独特の価値感を持っている方が多いように思います。

「お金の為」に「ものをつくる」のではなく、お金になろうとなるまいと、「それしかできない」、もしくは「それをやらないと気がすまない」人たち。

「一人でもいい、誰かが笑顔になってくれれば、自分が生きてる価値を信じられる。」

自分が持つ、なんらかの才能を活かして、世の中がちょっとでも楽しく明るくなってくれたらそれでいい。

いかなる労力も惜しまない。

採算度外視、「お金より、志が優先!」て人たち。

漫画家や、アーティストには、なぜだかそんな傾向があります。

私の周りに、たまたま多いだけかもしれませんが。汗

ただ、それは、言い換えると、そんな風に、お人好しで、金銭感覚がアバウトなアーティストさんたちは、ヘタをすると、良いように搾取され、都合のいい「カモ」にされてしまう危険がいっぱいある、てことになります。

実際、わたしも、長年、地域活性化イベントなどの実行委員をしてますが、ほとんどの主催者は、アーティストさんにギャラなんて払ってくれません。

驚くことに、芸術の都、パリの「JAPANEXPO」でも、それは同じでした。

これについては、詳しくはまたの機会に。

アーティストだって、さすがに雲や霞だけ食べて、生きていられません。

いくら気持ちがあっても、ずっと無償では続きません。

日本でもごく一部、有り余るほどのお金を手にできる立場のアーティストもいらっしゃいますが、余裕の中でボランティアするならともかく、よほど、売れっ子にならなければ、それだけでは食べられない人がほとんどです。

漫画家も同じです。

一時は良くても、連載が終わり、コミックスが再販されなければ、収入はたちまちゼロとなり、会社員とは違い、失業保険も、収入保証もありません。

仕方がないので、結局、食べていく為に、アーティストは、他の仕事で稼いだりします。

そのうち、どんどん他の仕事に比重が増えていき、才能があっても、アーティスト活動を諦めてしまう人も多いのではと思います。

また、ものを創り出す活動には、何かと経費がかかるわけですが、活動に費やす経費や、場所代や、参加費を払うために、日本では、平日は違う仕事をして、ハレの日だけアーティストする人がほとんど、という現実があります。

もちろん、生きがいを感じる仕事が他にあり、更に、趣味や特技を活かして休日にアーティスト活動をするのは、全然悪い訳ではない、というより、とても健全なことですが、それは通常は「趣味」という括りとなってしまうのでは?とも思います。

かと思えば、売れてる同人誌などで、いわゆる商業誌に描いてるプロより稼ぐ方もいたりするので、「プロアーティスト」と「アマチュアアーティスト」の境目も微妙ですが。

これだけ、世界が羨むくらい、才能あふれるアーティストがいる日本なのに、それだけで食べて行くためには、様々な問題があります。

NPO*Earthとしては、アーティストが力と知恵をあわせて「ArtがEarthに出来るコト」に取り組んでいきます。

「プロのアーティスト」が「アート」活動だけしていれば、「アーティスト」として食べて生きていける日を目指して、これからも活動をしていきたいと思います。

春休み
「こどものゆめをはぐくむ」をテーマに、「こどものゆめ映画祭」を開催します!

*Earthの活動にご賛同いただけましたら、お気軽に、ぜひご参加ください!

こどものゆめ映画祭
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