小川未明 『赤い蝋燭と人魚』映画化によせて

赤いろうそくと人魚』を映画にしよう、と決心したのは、2011年7月、まだ震災の傷跡深い、石巻での映画上映会ボランティアの帰り道でした。

以前から、いつかは映画に、と想い続けていた作品でしたが、
震災当日、テレビから観た津波の映像に精神的ダメージを受け、一度は映画化を諦めかけました。

三ヶ月たっても、電気も復旧していない、陸地に乗り上げた船や、津波に破壊された石巻の街を見て、被災者の方々の心痛を思う時、『やはり(映画化は)無理だ』と、つぶやきました。

ただ、そう想う一方で、東京から、車で、電源と、映写機を持ち込んで、ドラえもんはじめ、勇気と愛がいっぱいの映画を、夏祭りの広場に集まってくれた親子たちの前で、一週間、上映した、この『石巻2.0』というボランティアを経験して。

『切実』とも思える、傷ついた人々の『魂の渇望』と、それを、たとえ一瞬ではあっても、満たすことのできる唯一のものは、『感動』なのかもしれない、と悟りました。

『魂のたべもの』=エンターテイメントの存在意義や、映画の持つチカラの凄さを思い知りました。

表現者』の末席で、生きてる間に自分にできること、自分にしか出来ないこと、を、ボランティアの間中、自問自答していました。

そして、深夜、福島の近くを車で通り抜ける時に、ある答えが閃いたのです。

原発』こそ
人間の私利私欲の象徴であり
『赤い蝋燭』
なのではないのだろうか。

小川未明は、その鋭い感性で、人間のあくなき強欲、
そのために繰り返される地球環境の破壊や、失われる小さな命たちの、声なき声を聴き、
人間の私利私欲が、いずれは自らの首を締め、神と崇められていた場所が鬼門と成り、平和な海辺のまちを、そして、人類を、滅ぼしかねないことを、気づいていたのではないか。

震災を経験した今こそ、このかけがえのない『物語』を、そこに込められた『警鐘』を、多くの人々に伝えること。

それこそが、わたしの、ひとつの『使命』と言えるのではないか?と。

その年の秋、切り絵作家の西村つみさんとの、奇跡的な出会いがありました。

一年半後、素晴らしい切り絵の数々が完成しました。

黒い紙から、見事に切り抜かれた、西村つみ独特の世界観に、ときめきつつ、
映像化のために、切り絵にどのように色をつけるか試行錯誤して、今のような形に出来たのが、2013の夏。

スライド上映にして、生の朗読と、演奏をする形が実現したのは、2013年秋。

それから何度となく、様々な形での朗読、演奏付きの上映会を経て、いよいよ、赤いろうそくと人魚を映画化しよう、というプロジェクトが立ち上がりました。

2014年7月パリJAPANEXPOで発表。

8月.杉並区からオファーをいただき、阿佐ヶ谷七夕祭りで五日間の上演。

そして9月始め、突然、小川未明が亡くなるまで暮らしたお宅にお尋ねし、取り壊し直前に、小川未明の書斎のあったお部屋にて、お孫さんにお話しを伺うという、まさに奇跡的な、信じられないような機会を得ました。

映画化スタッフにより、当初の単純に切り絵をスライドする映像から、更に進化した映像に。

今回のしもきたシネマでは、フリーアナウンサー峰田 雅葉さんによる朗読をいただけることに!

亀の歩みではあるけれど、少しずつ、少しずつ、想いが叶って行きます。

朗読する方によって、毎回、違う色を放つ不思議な物語。

ぜひ何度でも、味わいにいらしてください!

小川未明のお孫さんのインタビューは、今まで見えて来なかった『人間小川未明』の片鱗を垣間見る貴重な機会となりました。

この成果は、いずれ映画という形にして、発表出来ると思います。
お楽しみに!


下北沢大学映像表現学部

+JAPANしもきたCINEMA
2014/10/12.13.19

映画の上映だけでなく、様々な方面のスペシャリストを招いた上映&講演&交流イベントとなります。

どなたさまもぜひお気軽にお越しくださいませ。

Facebookイベント
https://www.facebook.com/events/268192560043646/